Royal Enfield とは?

 1880年代初頭、イギリス・ウスターシャー州レディッチに設立されたタウンゼンド・サイクル・カンパニーを前身とするロイヤルエンフィールド社は、1893年に誕生して以来、長年に渡って世界のモーターサイクル市場を引っ張り続けました。その主力モデルのひとつであったブレットが登場したのは、1949年で、同年にはインドへの輸出が始まっています。
 そして1955年になると、サテライト工場としてインド・マドライにエンフィールド・インディア社が設立され、ブレットの製造を開始しました。
 その後、本国のロイヤルエンフィールド社が1970年に倒産したことで本国製ブレットも生産終了になったのは他のイギリス製モーターサイクルと同じです。ところがエンフィールド・インディア社が倒産しなかったことにより、ブレットは奇跡のように生き残りました。
 エンフィールド・インディア社は1995年、社名を正式にロイヤルエンフィールド社に変更し、現在に到ります。

 



 1980年代以降になると、急激な勢いで発展する日本製モーターサイクルに、他の国のメーカーも引っ張られる形で開発を進め、世界中の市場には次々に高性能モーターサイクルが投入されていきました。ところが、この波にもまったく無関係だったモーターサイクルが、エンフィールド・ブレット350/500です。当時、すでに時代遅れとなって久しいブレットでしたが、同社は車体構成、エンジン等を1949年登場以来の性能のまま造り続け、改良点はブレーキや発電装置等と、せいぜいマイナーチェンジの域を出ない程度に留めたのです。
 20世紀後半になると、ハイパワー、高性能になり過ぎたモーターサイクルに疑問を感じていた人々の間で、本物のビンテージとも言えるブレットは徐々に注目を集め始めます。さらに21世紀に入ると「新車で手に入るビンテージモデル」として、ニッチ市場を独占することに成功するのです。


 


      こうして時代の波に飲み込まれず、50年以上も変わらぬまま造り続けられたロイヤルエンフィールド・ブレット350/500でしたが、世界中で急激に高まった環境問題に対応するために、ついに大幅なモデルチェンジを余儀なくされてしまいました。そこで開発されたのがユニットエンジンモデルです。このニューモデルは、ミッション一体式のオールアルミエンジン、電子制御燃料噴射装置(EFI)、潤滑方式にウエットサンプ、大口径ディスクブレーキ、左チェンジ、セル付きを採用し、厳しい環境基準に充分に対応するモーターサイクルとして生まれ変わったのです。その反面、エンジンのボア×ストロークはブレットと同じ、バルブ方式もOHVのままと、ブレットの特徴をしっかりと受け継ぐものとなったのは、エンフィールドファンとしては嬉しいところでしょう。
 現在、日本ではブレット500エレクトラEFIクラシック500EFIクラシック350クラシック500ミリタリーの4モデルが発売されています。特にクラシック500EFI/クラシック350は、ビンテージモデルと見紛うほどスタイリッシュな外観から、ブレットの後継機として大きな期待が寄せられています。
 時代の波に逆らうことはできませんでしたが、ロイヤルエンフィールド社は、これからも市場唯一のOHVビッグシングルモデルを造り続けてくれるのです。

 


 

ロイヤル・エンフィールド・ブレットは
本当にマニアしか乗れないモーターサイクルか?

「初心者ですが、エンフィールドはメカに強くなければ乗れないのでしょうか。すぐに壊れるという噂を聞いており、購入したいと思っていても不安です」
 こういった相談を受けることがあります。
 ネット上でいろいろなサイト(主に掲示板)を見ると、たいていはネガティブな意見が書き込まれていて、それを読んで余計に不安になってしまうようですね。
 ところが、実はそういうネガティブな意見を書く人に限って、ブレットのオーナーでもなく、中には触れたことすらないという人が多いものです。実際には、ブレットは誰でも乗れるモーターサイクルだと断言できます。特にここ数年のモデルは、工作精度もグンと高くなっており、友の会管理人が経験したようなトラブルはなくなっています。
 事実、ブレットには女性オーナーも多く、彼女たちの大半はメカのことなどまったく知りません、といった人たちばっかり。もちろんそういう男性オーナーも少なくありません。かく言う管理人も、メカに関しては基本的にオンチです。それでも何の問題もなく、エンフィライフを楽しんでいます。
 ブレットは決してマニアしか乗れないモーターサイクルではありません
 確かに日本車に比べれば少々扱いにくいとはいえるでしょう。しかしそれは決して苦痛になるほどのレベルではありません。ちょっとコツがいるかもしれない……その程度のことなのです。